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「ガラクタ商店街」タイトル

その69                『がらくたからもの』対談と主張する平和記念“糸とおし”の巻

弓屋かえる堂さえきあすか

 対談をみてきました。大平一枝さんと牧野伊三夫さんの。
場所は代々木上原。はじめて降りた駅なので、まずは場所の確認をと、駅から徒歩3分の〔ハコギャラリー〕を探しました。夕方4時からのオープンということで準備中です。時計を見ると3時10分。会社を早退した私は少し早めに着いてしまい、しばしの時間楽しい街探検となったのですが、渋谷区の大都会を想像していたら、下町っぽいというか感じのいい街で、それも陶器屋さんや天然石のアクセサリーショップに、お花屋さん、ギャラリー、リサイクルショップ、書店など、趣味のお店が駅周辺にたくさんあるのです。心に余裕のある人が多い街だと思ったりして。ハコギャラリーの近くには、お茶の水にある自然食品のお店〔GAIA〕もあり、それも店頭にて、国産リネンのブラウスとスカートが半額、カゴは20%OFFになっています。バーゲンに弱い私は、帰りに必ず見ることにして、ぐるぐる歩くこと50分。いろんなお店が楽しそうに並ぶ坂の街に、楽しさを感じていました。
 でも考えてみたら、この土地には電車で来たことはありませんが、車では来ていました。勝見充男さんのお店〔自在屋〕が代々木上原にありました。うかがったのが夜遅い時間だったので、坂とか街並みが暗い景色一色で脳裏にインプットされ、思い出せなかったのです。余談になりますが、勝見さんは以前ご紹介した『遊楽』で連載を持っておられ(残念ながら今はこの雑誌はなくなってしまいました)、紹介する鉛筆削やインク壷が、めちゃめちゃかっこよく、ずっとあこがれていました。お店のほうも茶室がある素敵な日本家屋で、緊張しながらお邪魔した記憶が残っています。アイビーがお好きといわれるだけあって、オシャレな方なんですよね。そのオシャレな装いから渋い李朝や、唐津のモノたちがでてくる不思議さというか、ミスマッチな感じが、個性的で勝見さんらしいなぁと思っていました。
 

インク壺が紹介された骨董屋の非売品
インク壺が紹介された骨董屋の非売品

 余談はさておき、大平一枝さんの何冊もある著書の中で、私は『かみさま』が一番好きです。紙のことを、あえてひらがなで“かみ”と書いて“さま”をつけ、“かみさま”としたタイトルはもちろんのこと、紙面で紹介された紙物語が、すごく素敵で、いっきに読んでいました。ちなみに本日の対談は、『センス・オブ・ジャンク・スタイル』(風土社発行)という、暮らし、住まいについて書かれた雑誌の創刊記念ということで、次号に登場される牧野伊三夫さんと大平さんが、ガラクタについて語り合われます。
 と、その前に、ハコギャラリーの入口から展示されているのは、創刊号で紹介された方々の手作りのモノたち。たとえば革職人の方が、鞄を作った余りの革から作られたブックカバーやマグネット、トレイとか、匙屋さんは、匙を作った余白部分の木を使って、いろんな形の車を作っておられたり、鉛の箸置きや繕いだらけのジーンズなどなど、ポイと捨ててしまう部分に息を吹き込んで、産み出されたモノたちばかり。

かみさま
かみさま

骨董屋さんを発見
センス・オブ・ジャンク・スタイル




 近頃、どうも焦って「何事も合理的に」って考えがちな私は、そんな言葉に、考えさせられてしまいます。肝心の対談は、牧野さんの宝物をひとつひとつ見ながらのお話で、私がいうのもなんですが、視点がとてもユニークな方でした。牧野さんの場合、自主的に集めたモノではなくて、たまたま家にやって来たモノ、もしくは歩いていて拾ったモノ、自然にそうなってしまったモノなど、生活の中で心にピンッときたモノたちを「たからもの」とはにかんで話される姿に、笑いがこぼれていました。詳しく内容を知りたい方は次号をお楽しみに。http://www.kurashi-no-gara.com/
 
 大平さんが対談の最後のほうで、「モノが溢れた現代の中で、モノと自分の間の時間、物語が、これからは大切なんじゃぁないかと思う」って話されました。同感です。今は耳をふさがなければ、自分の知りたいことが聞こえなくなりそうだし、目をつぶらなければ、なにが欲しいのか見えなくなりそうなくらい、モノゴトが溢れていますから…。

 なにはともあれ、ひさしぶりに対談を見て、“テンペ”という、大豆をテンペ菌で無塩発酵させたものが入ったチーズケーキと穀物コーヒーをいただいて、元気いっぱいになりました。帰りにはGAIAにて、お約束のブラウス&スカート、カゴを購入し、ふらりとひさしぶりに入った近所の骨董屋さんで、“糸とおし”を見つけました。

平和記念糸とおし
平和記念糸とおし

 この糸とおしは、電気がまだまだ普及していない時代の夜に、針仕事をしようにも部屋が暗くて、手元の針に糸をとおすのが大変だったため産まれたモノです。実物を手にとってみると、「本当に使えるの?」って思うほど、おおざっぱな出来栄えですが、アンチモニーという素材で長さが4センチほどの小ささであるにもかかわらず、形も多種多様で、模様や文字まで違うので、私にとっては、すごくお気に入りのガラクタコレクションのひとつです。でもどれも似たようなデザインなので、じっくりと見て自分が持っているモノかどうか確認します。
 ところが、今日の糸とおしは違いました。ひと目で「これは持ってない!」とわかったのです。そう、今まで見たことのない文字が描いてあったから。値段がわからなくて、帰ったばかりという店主にわざわざ戻って来てもらい(それも汗だくになって。すみません)、譲っていただきました。なんと! この糸とおしには『平和記念』、『みくにのため』と描いてあるのです。主張する(?)糸とおしははじめてです。よくぞ平成も20年を迎える今日にあって、でてきてくれたと愛しさも倍増しちゃいます。

糸とおしコレクション
糸とおしコレクション

計量カップを花瓶に
計量カップを花瓶に

 そしてもうひとつ。計量カップを買いました。ビールの大ジョッキの大きさです。トロンとした古めのガラスで、『大阪五合』の文字とメモリが彫ってあります。ひと目見て花瓶にしようと思いました。牛乳ビンだとお花があまり入りませんが(その64参照)、これなら大丈夫と喜んでつれて帰りました。それにしても、大平さんと牧野さんの『がらくたからもの』対談のあとに出会えたガラクタですから、これは縁ですよね。





2007年10月10日更新
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