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さえきあすか

その1 野球蚊取線香の巻


 「蚊」といえば,医学や公衆衛生が今ほど発達していない時代には,マラリアやフィラリアなどの病気を媒介する生き物として大変恐れられていました.けれど,それだけではありません.蚊に刺されることにより,仕事の能力が減少し,また各家庭で蚊帳を買うことになればお金も使うわけで,蚊のためにどれだけ無駄がでて国益を損なうことか!と昭和19年に発行された『蚊と蠅』(石井信太郎著・東亜文化書房)には書いてあります.蚊と国益なんて大げさな気もしますが,この本の記述ばかりでなく,昭和30年代にも蚊と蠅を撲滅するための国民運動とやらが,なんと閣議で決定されていますから,本当に大きな問題だったようです.現在の花粉症に近いものを感じます.
蚊取線香 蚊取線香ができる以前は,よもぎ、みかん、かやの葉を室内で燃やす「蚊やり火」という方法で,蚊を追い出していました.夏の夜でも部屋をしめきって寝ていたとか.想像するだけで,気管の弱い私は咳き込みそうです.除虫菊入りの「うずまき型蚊取線香」が発売されたのは明治35年.金鳥の創立者である上山英一郎さんがつくられ,その後多くのメーカーから発売されました.私の持っている戦前の蚊取線香をいくつか見てみると,どの箱にもマーガレットによく似た除虫菊が描いてあります.除虫菊の産地は紀州なので,メーカーも和歌山が多く,どれも似たラベルで,まるでおみやげ物のようです.
 そんな中にあって,斬新なデザインの蚊取線香を見つけました.その名も「野球蚊取線香」.商品名の文字が右横書きなので,戦前の代物と思われます.貴重な除虫菊を四隅に追っ払い,中央に大きく描かれたボールの中には,ピッチャー、バッター、キャッチャーの姿が描かれ、周囲を大胆にスコアボードで囲っています.いったいなぜ蚊と野球が結びついたのでしょうか? まさか野球観戦に持っていったとか? いくらなんでもそれはないでしょうから,当時の野球人気にあやかったものだとは思いますが,蚊取線香のパッケージというと,鳳凰やライオンなど強そうな動物が定番なので,変わり種ともいえる野球蚊取線香の発見は,すごく嬉しかったです.ちなみに,このステキな蚊取線香は,骨董市,古道具屋さんで結構出回りましたので,まだ手に入ると思います.
 蚊取線香を紹介するには少し時期が早いと思いましたが,私としては最近明るい話題を提供してくれる野球にちなんだ商品として選びました.あまりスポーツに関心のない私でさえ,絶好調の阪神はとても気になっています.

蚊取線香


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