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針箱

その25 針箱の巻


 コレクションとしてではなく、実用品として今すぐにでも使いたい古いモノがありました。なにかというと“針箱”です。

 裁縫が得意でない私が長年使っているのは、中学生の時から使っている、というか、側にいるプラスチック製の裁縫道具箱。だいたい裁縫なんて、ボタンつけしかしないので、あまり意識したことがなかったのですが、ある時糸やらハギレやらつめこみすぎて、道具箱のフタがしまらない様子に、
 「いくらなんでも、もう少し大きいほうがいいなぁ」
と思ったのです。その上、洋服のボタンをいろいろな場所に適当に入れてしまう私は、つい先日ボタンをなくして大騒ぎ! 結局同じボタンが見つからず、全部付け替えるハメに‥‥。
 「ボタンがたくさん入る、大きな針箱を買おう!」
現実問題として針箱の必要性をヒシヒシと感じたのでありました。

針箱

プラスチック製の裁縫道具箱

 そして、針箱を買うなら古道具屋さんで、と決めていました。それもひきだしがたくさんついている針箱が欲しい! こういう願望を満たしてくれるのは間違いなく骨董市です。東京で開催される50件以上の業者さんが集まる市であれば、かなり遠方の業者さんもこられますし、針箱なら必ず何個かやってきます(ハズです)。
 問題は針箱の状態、例えばひきだしが開けづらいとか、木によって模様や色が違いますから、その辺の好みとか、後はお値段ですね。凝ったつくりのステキな針箱になると、ひきだしの取っ手部分の金具が素晴らしい装飾だったり、お値段も素晴らしかったり、いろいろです。後はなんだかんだいっても「縁」。
 そんなことを思いながら数ヶ月間探していたら、針箱が数個並んでいる業者さんをみつけました。なんでも金沢の業者さんだそうで、話しているうちにパッと買ってしまったのです。まさに「縁」。
 高さが23.5センチ、横幅29センチ、奥行き18.5センチの箱型で、ひと昔前はどこの家でも見かけた、よくある針箱です。けれど、きちんと丁寧につくってあり、上のフタも、ひきだしの開け閉めも問題なくスムーズで、箱の中の状態もよく、桑の木の模様が鮮やかでステキです。そしてお値段も安くしていただけたので即決しました。これからは、とりあえずボタンだけは針箱の中に入れよう、そう思いながら家につれて帰ったのです。

針箱

 現在のように、既製品の洋服がたくさん、それも安く出回っていなかった時代は、当たり前のように裁縫ができる女性がたくさんいたように思います。私の母親も洋裁学校に通っていたので洋服がつくれたし、祖母だってほどいた和服を張り板に張って新たにこしらえたり、綿をつくっていた時期には、冬物の着物はもちろんのこと、布団や座布団など、いつもなにかしら縫っていた記憶があります。もちろん祖母たちの側には、ひきだしがたくさんついた箱型の針箱がありました。そんな光景を私の家にやってきた針箱に重ねて、なにかをつくれるのは、いいなぁ、なんてしみじみ思ったりして。
 
『和風探訪・にっぽん道具紀行』 しかし、『和風探訪・にっぽん道具紀行』(筑摩書房)の中で紹介されている針箱の箇所を読んでいたら、ひとつ気になることが‥‥その本によると、
 「針箱のなかは一生片付かず 柳多留」
という江戸川柳があるそうですが、古くから和の暮らしは、出し並べの暮らしで、見た目のだらしなさを戒める備えとして、ひきだしが多い収納具がよしとされ、推奨されてきたそうです(どうりで、ひきだしの家具をよく見かけるわけです。ひとり納得!)。
 けれど、ひきだしの中は乱れ放題で、“臭いものにフタをする”というようにしか使いこなせないのが和の伝統だというようなことが書いてあったのです。
 私はドキッとしました。だって、昔から私はひきだしが大好きなんです。現在も大小あわせると6個のひきだし家具が部屋にあったりします(針箱も含む)。つまり私は根っからの「和」人間であったかと、しみじみ思った次第。もちろんひきだしの中は‥‥言葉にするまでもありません。やれやれ。

わたし


2003年7月17日更新
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