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「ガラクタ商店街」タイトル

さえきあすか

その6 ベティちゃんの巻


 困りました。
 今回はどうしてもベティちゃんについて書きたいのに、私はベティちゃんのモノを持っていません。
メンコ表かろうじて昭和10年代につくられた面子を1枚みつけましたが、抜取面子の中の1枚、それも切り取る前のモノで、この面子だけでベティちゃんについて書くには、ちょっと無理があります。
 前々回にも書きましたが、「マイナー趣味」といわれる私です。多少は人気のあるキャラクターのモノも持ってはいますが、圧倒的に数が少ないといわれる、戦前に日本でつくられたベティちゃんなんて、当然のことながら持っていませんし、値段もけっこうするので手がでません。
 けれど『駅前ガラクタ商店街』では、毎回なにかしら昔のガラクタにからめて文章を書いているので、肝心な主役がいないありさまに、すっかり困ってしまいました。
 仕方がありません! 今回は正々堂々と友人の本を宣伝させてください! 7月に発行された新刊です。友人の名前は安野 隆さん。30年間ベティちゃんだけを集めてきて、1冊の本にまとめられたのです。
ベティ・ブープ図鑑
 「ベテランコレクター」といえる安野さんは、以前から名前だけは聞いていた有名人でした。けれど、どんな人かというと、いまひとつわからない。名前だけが先行している人でもありました。なので会うまでは、「きっと敷居の高い人に違いない」と思っていましたが、会ってみると、ぜんぜんコレクターっぽくないんです。こちらから聞かなければ、ベティちゃんについて話すこともありません。彼は「マイペースでシャイなコレクター」、そんな感じの優しい男性でした。
そういえば、業者さんがいってたっけ。
 「表にでてこない有名コレクターは何人もいるけど、安野さんは、そんな中でもトップクラスの人だと思うよ」って。
 決して自分からは目立とうとせず、ひょうひょうと集めつづけた彼の姿は、一風変わったコレクターという印象を多くの方に与えているようです。
 某テレビ番組でおなじみであり、コレクターとしても大変有名な北原照久さんでさえ、「ベティちゃんのコレクションは、彼にはかなわない」といっています。なのに、とうの本人はというと「誰の話?」とでもいうような淡々とした態度。そこが安野さんの魅力といえます。
 ところが、彼はコレクションを1冊の本にすることで、ベティちゃん探しをやめました。
 「何事にも終わりがあるから自分自身でけじめをつけたい」といって。
 当然、まわりのコレクター、業者の方々は驚き、信じません。いつか復活すると思っています。だって、30年もつづけた趣味をやめるのです。よほどの決心がなければ、なかなかできることではありません。このドラマティックな、いさぎのよい締めくくり方を、ぜひとも本のあとがきに書いてほしいと、出版社の人にいわれたそうですが、彼は逆に「今後もコレクションを続けていきます」と記して終わらせました。
 悲しいことですが、いずれ身体は衰え、コレクションには限界がきます。けれど昭和初期に生まれたベティちゃんは、場所が変わっても、主人が変わっても、ずっと生きつづける。あくまでもこの本の主役は彼女、ベティちゃん。だから自分の終わりはこの本には書きたくない、安野さんはそう思ったのです。
 興味のない人から見れば、ただのモノかも知れないベティちゃん。けれど最後の最後までベティちゃんの立場に立って、自分自身はあくまでも、過ぎていく脇役としてとらえた安野さんの生き方は、私にとってあこがれであり、彼のやさしさが身にしみました。
 肝心な本のタイトルはというと、『日本製 ベティ・ブープ図鑑 1930〜1960』(光芸出版発行)。A5サイズの304ページという中に、500点余りの日本でつくられたベティちゃんこと、「ベティ・ブープ」がカラー写真で一堂に紹介されています。発行元が小さい出版社なので部数が少なく、定価が4,200円と高めですが、掲載されたモノたちは、見ることができない珍品ばかりですので、ぜひとも見かけたら手にとってほしいです。全国の書店さんで注文できます。お問い合わせは光芸出版さんへ。電話番号は03-3433-6261です。
 また、ナマイキにも友人代表として、この本の推薦文を光芸出版さんの新刊案内に書かせていただきました。それをご紹介させていただいて、宣伝を終了したいと思います。
 『今から約70年前に、アメリカで生まれたベティちゃんこと、正式名称「ベティ・ブープ」は、ミッキーマウスなどの人気者キャラクターと一緒に日本にやってきました。
 けれど、文化の違うお国柄。ベティちゃんは、着物を着たり、琴の練習、羽子板など、当時の日本文化に慣れようと一生懸命でした。
 この『日本製 ベティ・ブープ図鑑 1930〜1960』では、今まで紹介されることのなかった、「ベティちゃん」というひとつのキャラクターを通して、ひと昔前の日本をのぞいてみようというもの。
 はたまた、世の中が急激に変化している今日にあって、30年という人生の大半を、ベティちゃんのコレクションにささげてきた、安野 隆さんの生きざまをも紹介したもの。
 500点という膨大な数のコレクションに心うたれること間違いなし! 懐かしさと、心あたたかくなるベティちゃんの笑顔を見てほしいのです。』
メンコ裏


2002年8月21日更新
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その5 うさぎの筆筒の巻
その4 衛生優美・リリスマスクの巻
その3 自転車の銘板「進出」の巻
その2 忠犬ハチ公クレヨンの巻
その1 野球蚊取線香の巻


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