「まぼろしチャンネル」の扉へ
「番組表」へ 「復刻ch」へ 「教育的ch」へ 「東京カリスマch」へ 「日曜研究家ch」へ 「あった、あったch」へ 「再放送」へ 「ネット局」へ
ら〜めん路漫避行
まぼろし書店・神保町店
少女漫画 ふろくの花園
帝都逍遙蕩尽日録
定食ニッポン
駅前ガラクタ商店街
日本絶滅紀行
怪獣千一夜
秘宝館
掲示板
マガジン登録
メール
まぼろし商店街
まぼろし洋品店

「ガラクタ商店街」タイトル

その65
浦賀からやってきた江戸時代の灯芯押さえの巻
弓屋かえる堂さえきあすか

 神奈川県は横須賀市・浦賀へ行ってきました。神社でいただく“御朱印”からはじまって、実は“方位とり”…なんていうものにも興味がわきまして、私にとってヨイ方位とされる土地、それも自宅から35キロ以上離れた土地へ向かってですね、旅行風水というものを実践しはじめたのです。
 それも仕事の休みが不規則な私としては、「明日休めそうだなぁ」、「天気もよさそうだなぁ」って思ったら、方位と距離を確認して目的地を決め、翌日の気分で行くことを決める。そして家事だけはきちんとしていかないと、方位とりはできないようなので、片付けが終わり次第出発します。つまり時間もテキトー、気ままな1人旅が多くなってしまうのですが、まだまだはじめたばかりだというのに、パワーをいただいているのか、気持ちが元気になるから不思議です。私にはかなり向いている趣味? だと確信しつつある今日この頃なのです(途中で飽きたらスミマセン)。
 
 思えば、電車も飛行機もなかった時代から、伊勢神宮をはじめ、多くの神社へお参りの旅をすることは、とても楽しく、神聖な行事だったはずで、人々は遠方の地でお参りをし、食事をし、お水を飲んで、お土産を買って帰ることで、元気をいただけることを肌で感じていたのではないでしょうか? 今ほど情報が溢れていなくて、夜も長かった昔には、動物としての人間の五感は、今よりぜったいに研ぎ澄まされていたはずですからネ。
 
 と、余談はさておき、今回の目的地は浦賀湾の東西にある叶神社。…といっても本当は叶神社と別の神社へ行こうと思っていたのですが、浦賀駅の掲示板に、「東西の叶神社を渡し船で渡ってお参りすると願いが叶う」とかナントカ書いたポスターが貼ってあって、駅のホームで叶神社が2つあると知ったのです。つくづくテキトーな方位とりなのであります(これでいいのか?)。でも“叶神社”って、確かに魅力的な名前ですね。全国でもここにしかないんですって。願い事が叶う神社、ありがたい感じです。
 「でも、東から参るのか西から参るのか? お参りの仕方ってあるのかしら?」
  そこまではポスターに書いてありません。
 「陽は東から登るから東からかなぁ?」
 よくわからないまま駅員さんに観光案内のチラシを頂いて、とりあえず近くの西にある叶神社を目指して歩きはじめました。
 「宮司さんに聞いて、東からだったらやりなおせばいいや」
 なんて、スミマセン。こんな調子でスタートです。

 西叶神社は、湾に面したところに鳥居がありました。階段を上っていくと、拝殿の格天井(ごうてんじょう)の龍の彫刻をはじめ、力士や小鳥など、実に彫刻が美しい神社で、海を見下ろせるのも感激でした。

西叶神社の鳥居
西叶神社の鳥居

彫刻が素晴らしいです。
彫刻が素晴らしいです。

格天井も見事です。
格天井も見事です。

浦賀湾が一望できます。
浦賀湾が一望できます。

鳥居の先に海、ステキですね。
鳥居の先に海、ステキですね。

なんでも源氏の再興を祈願して石清水八幡宮を勧請した神社だそうで、平家が滅亡し、その願いが叶ったことから「叶明神」の称号が与えられたとか。いやぁ、源氏に平家、歴史は綿々と続いて今日に至るのでした。海から吹いてくる風に、すっかりさわやかな気分になった私は、第一の目的である御朱印を、社務所で頂きました。
 「すみません。ふたつの叶神社は、お参りするのに順番はあるのでしょうか?」
 「いえ、とくにありませんよ」
 じゃぁ西からでよし。次は東へ。と、お礼をいって境内を出ようとすると、目の前に骨董屋さんがありました。

アンティーク・ガーネット
アンティーク・ガーネット

店名は“アンティーク・ガーネット”。見るからに古い建物で、ステキな店構えの骨董屋さんです。もちろんはじめて知りました。なにも調べずにやって来て偶然出会えたのです。「店名から想像するに西洋骨董かしら?」と思いつつ、店内を覗くと和のガラクタがチラチラと視界に入ってきました。それも真面目な骨董&ガラクタ多し!と判断。
 「すみません。少し見させてください」
 お店の奥様に声をかけ、足を踏み入れました。そのとたんに「プ〜ン」と骨董屋さん独特の昔の香りといいますか、古いモノたちが醸し出す時代の香りに、なんだか懐かしい気持ちになってしまい、思わず目を閉じて嗅いでしまいました。「こういう気持ちはひさしぶりだなぁ」と感慨深かったりして。

大正時代の箸置き
大正時代の箸置き

 ガラスケースの中には古い和食器やオールドノリタケ、玩具に生活雑貨、着物など、幅広い品揃えです。私は小鳥の形をした箸置きに瞳キラリ。箸置きは自宅で食事をする際に必ず使うので、何種類か鳥型のモノを集めてきたのですが(現代のモノです)、大正時代の箸置きは持っていません。5個まとめてのお値段で、こんなに必要はないのですが、今の箸置きよりデザインも丁寧で可愛らしいので、全部つれて帰ることにしました。

灯芯押さえ
灯芯押さえ

 そして、ガラスケースの奥でポツンとたたずんでいた鳥を目が合いました。今回ご紹介する“灯芯押さえ”です。金属製と陶器製の2種類があり、最初見た時は「これはなんだ?」と思ったのですが、お店のご主人に伺うと、灯芯押さえとのこと。遥か昔の江戸時代、灯りが生火しかなかった頃には、土器や陶器製の灯火皿に菜種油などを注ぎ、灯芯を置いて火を付けて灯りをとりました。その灯芯の火を消したり、押さえた道具なのだとか。手に取ってみると、両方とも油が付着していて時代を感じます。けれどこの鳥たちは、江戸の暗い夜を薄ぼんやり照らした炎を眺めていたんだなぁと思うと、なんだか不思議な気持ちになります。私は喜んでつれて帰ることにしました。
 
 しばしお店で立ち話をしたのち、浦賀湾をわたる渡り船に乗りました。

浦賀の渡し
浦賀の渡し

ブザーで舟を呼びます。
ブザーで舟を呼びます。

可愛らしい船が向かってきました。
可愛らしい船が向かってきました。

船がいないのでブザーを押しましたが、誰も出て来ないのでもう1回押してみると、目の前から朱色の立派な船が向かって来ました。私個人としては、矢切の渡し船のような渋い船が好みなのですが、楽しいのでいいや。早速乗り込むと、
 「ブザーは1回でいいからね」
 とご注意を受け、
 「スミマセン」
 とペコリ。
 空は高く青く、湾を挟む山々は初夏の季節いっぱいの美しさで、新芽と古い芽?のまばらな緑模様が輝いています。鳥の鳴き声と風に揺られて、ほんの数分の船旅でしたが、満足、満足の気持ちでいっぱいになりました。

東叶神社
東叶神社

こちらも浦賀湾が一望できます。
こちらも浦賀湾が一望できます。

鳥居の先には海が。
鳥居の先には海が。

 東叶神社も湾に面したところに鳥居があり、西叶神社同様に浦賀湾を見下ろしています。そして、こちらは勝海舟が咸臨丸での太平洋横断の前に、裏の井戸で水垢離(みずごり)をした後、断食をした場所だとか。う〜ん。歴史があるなぁ。お参りの後は御朱印をいただいて、すがすがしい気持ちで神社を後にしました。ささやかな旅? でしたが、ほんのちょっと訪れただけでも歴史の教科書を垣間見たような気分になり、とても楽しかったです。
 さてさて、来月はどっちの方位がいいんでしたっけ?

右が西叶神社、左が東叶神社の御朱印。
右が西叶神社、左が東叶神社の御朱印。


2007年6月1日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com まで


その64 戦前の牛乳ビンは花瓶の巻
その63 便利な実用品『回轉式踏台』の巻
その62 美味しい野菜&野菜種袋の巻
その61 元旦の福袋!日満ポンプと戦前鉛筆削りの巻
その60 国産マッチ創始者『清水誠』とマッチ入れの巻
その59 “萬年海綿器”と“スタンプモイスチャー”の巻
その58 上野「十三や」のつげ櫛の巻
その57 斎藤真一『紅い陽の村』と『夫婦岩』の大皿の巻
その56 ケロちゃん色の帯と『LUNCOの夏着物展』の巻
その55 こわれてしまった招き猫「三吉」の巻
その54 下北沢の『古道具・月天』と画期的発明鉛筆削りの巻
その53 無料で魅力的なモノ、例えば「ケロちゃんの下敷き」の巻
その52 時間の整理と時間割の巻
その51 自分へのごほうび、昔の文房具に瞳キラキラの巻
その50 アンティーク家具を使ったブックカフェで…の巻
その49 『Lunco』と『小さなレトロ博物館』、着物だらけの1週間の巻
その48 コルゲンコーワのケロちゃんと『チェコのマッチラベル』の巻
その47 「旧軽の軽井沢レトロ館にてレースのハンカチを買う」の巻
その46 濱田研吾さんの『脇役本』、大山と富士山型貯金箱の巻
その45 横浜骨董ワールド&清涼飲料水瓶&ターコイズの指輪の巻
その44 『セルロイドハウス横浜館』とセルロイドのカエルの巻
その43 奈良土産は『征露軍凱旋記念』ブリキ皿の巻
その42 ブリキのはがき函と『我楽多じまん』の巻
その41 満州は新京の絵葉書の巻
その40 ムーラン鉛筆棚の巻
その39 「Luncoのオモシロ着物柄」の巻
その38 ペンギンのインキ壷の巻
その37 「更生の友」と「ナオール」こと、60年前の接着剤の巻
その36 鹿の角でできた「萬歳」簪の巻
その35 移動し続けた『骨董ファン』編集部と資生堂の石鹸入れの巻
その34 「蛙のチンドン屋さん」メンコと亀有名画座の巻
その33 ドウブツトナリグミ・マメカミシバヰの巻
その32 ガラスビンと生きる庄司太一さんの巻 後編
その31 ガラスビンと生きる庄司太一さんの巻 前編
その30 『家庭電気読本』と上野文庫のご主人について‥‥の巻
その29 ちんどん屋失敗談とノリタケになぐさめられて‥‥巻
その28 愛国イロハカルタの巻
その27 ちんどん屋さんとペンギン踊りの巻
その26 「ラジオ体操の会・指導者之章」バッチと小野リサさんの巻
その25 針箱の巻
その24 カエルの藁人形と代用品の灰皿の巻
その23 『池袋骨董館』の『ラハリオ』からやってきた招き猫の巻
その22 東郷青児の一輪挿しの巻
その21 西郷隆盛貯金箱の巻
その20 爆弾型鉛筆削の巻
その19 へんてこケロちゃんの巻
その18 転んでもただでは起きない!達磨の巻
その17 ケロちゃんの腹掛けの巻
その16 熊手の熊太郎と国立貯金器の巻
その15 単衣名古屋帯の巻
その14 コマ太郎こと狛犬の香炉の巻
その13 口さけ女の巻
その12 趣味のマーク図案集の巻
その11 麦わらの鍋敷きの巻
その10 お相撲貯金箱の巻
その9 カール点滅器の巻
その8 ピンク色のお面の巻 後編
その7 ピンク色のお面の巻 前編
その6 ベティちゃんの巻
その5 うさぎの筆筒の巻
その4 衛生優美・リリスマスクの巻
その3 自転車の銘板「進出」の巻
その2 忠犬ハチ公クレヨンの巻
その1 野球蚊取線香の巻


「カリスマチャンネル」の扉へ