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ペンギンのインキ壺とまぼろし洋品店の南極シャツ

その38 ペンギンのインキ壷の巻

弓屋かえる堂さえきあすか


いちばんお気に入りのペンギン

ペンギンのインキ壺 大好きなペンギンの写真があります。
 昭和33年に新潮社から発行された『南極物語』(ド・ラ・クロウ、近藤等訳)です。巻頭にモノクロ写真が何枚かありますが、その中の1枚が、メチャメチャ可愛いのです。雛をつれた皇帝ペンギンの群れです。たくさんいるペンギンの中で、一番太った赤ちゃんが中央にいるのですが、後ろ姿で、まんまるくて、なんともいえない愛くるしさなのでした。私は今まで見たペンギン写真の中で、一等賞をあげたい気持ちでいっぱいです。
『南極物語』 この本は古書市で買いました。残念ながらカバーはありませんが、昔の書籍ってステキですね。書籍本体に布が貼られているのですが、茶色の布で中央には銀色で南極の地図と、文字が型押しされています。実にかっこいいデザインなのです。手に持っただけで夢があるというか、ワクワクします。つねづね思うことですが、こういう凝った本は単なる書籍ではなく、モノとしての価値も十分に備わっています。
 私だけでなく、世の中にはペンギン好きな人が多いです。通勤帰りに銀座を歩いていると、ペンギングッズだけ取り扱ったお店もありますし、行ったことはありませんが、伊豆にはペンギン博物館もあるとか。お気に入りの絵本『ペンギンゴコロ』(さかざき ちはる、ぶんけい)のペンギンは、JRのスイカのキャラクターに使用され、方々の駅に貼ってあるし、コレクションを紹介した本、写真集などたくさんあります。
 人気者のペンギンは、ひと昔前から人気がありました。たくさんのグッズがつくられ、古いモノ好きの間でも人気者です。けれど、こんなにペンギンが好きなのは日本人だけだそうです。それも日本人にとって、「ペンギン」とは自信を与えてくれた、特別な動物だったのです。

ペンギンのインキ壺 私は『ペンギン、日本人と出会う』(川端裕人、文芸春秋)を読んで驚きました。この本には、ペンギンと日本人の歴史が、とても詳しく、楽しく紹介してあります。たとえば、絶滅の危機といわれているフンボルトペンギンは、世界中で約12000羽しかいないそうですが、なんと日本の動物園、水族館には約千二百羽という、一割の数が飼育されているというのです。つまり、日本人は世界で一番ペンギンを飼育するのが上手なのです。
 戦後日本人の目にペンギンがとまるようになった理由は、捕鯨船がつれてきたことにはじまるそうです。敗戦後食糧危機にあったこの国では、安価な鯨を食料にして生き延びてきたという一面もあったのでした。それも昭和34年に鯨の捕獲頭数が国別に決められる以前は、全体の頭数制限の中で、捕鯨国が競って鯨を取れる仕組みになっており、この競い合いを「オリンピック方式」、または「捕鯨オリンピック」と呼んでいたそうです。そして、日本人は鯨を捕るのが上手だったのです。
 敗戦で自信を失った日本人にとって、捕鯨では頑張れるという事実は自信を与えてくれました。そんなヒーローともいえる捕鯨の漁師さんたちが、船でつれてきたのがペンギン。そして、飼育でも世界一になったペンギン。ペンギンは可愛らしい姿と動きを持って、当時の人々の心を勇気づけ、癒してくれたのではないでしょか。

ペンギンのインキ壺 それだけではありません。そんなペンギンを、昭和23年に会社のキャラクターに使用したサンスターは、昭和26年よりテレビの天気予報で、「ペンギン、ペンギン、かわいいな」というフレーズの「ペンギンさん」(重園よし雄作詞、平岡照章作曲)という歌と、ペンギンを放映し、ロッテのクールミントガムをはじめ、多くの企業で、マスコットとして使われるようになりました。ペンギンの存在は、こうして大きくなっていったのです。
 そういえば、数年前に埼玉県浦和市で開催された今はなき骨董市で、「ペンギン、ペンギン、うれしいな」という文字と、楽しそうに歌う3羽のペンギンが描かれた、子供用のお茶碗を買いました。文字が微妙に違いますから、サンスターのお茶碗ではないと思いますが、このお茶碗はテレビの天気予報を真似してつくられたモノだったのですね。そう思ってお茶碗のペンギンを見てみると、サンスターのペンギンによく似ています。

ペンギンのインキ壺

 そんな日本人に馴染みの深いペンギングッズの中で、紹介したいのは、ちょっと渋めの代物、ペンギンのインキ壺です。アンチモニー製で、ずっしりと重たく、2羽のペンギンが寄り添っているデザインです。ただ、開け方がちょっと怖いというか、ペンギンの顔を上に開けると、首もとから下に向けてガラスの容器が入っており、インクを入れるのでした。2羽のペンギンが頭がなくなった様子は、あまり可愛くありませんが、机の上にポンッと置くだけで楽しくなります。私はこのインキ壺を「仲良しペンギン」と呼んでいます。

ペンギンのインキ壺

 ちなみに、やってきたお店は東京のステキな下町、台東区は池之端にあるお店・エキスポです。上野動物園にも歩いていける所なので、仲良しペンギと出会った場所としては、うってつけのお店といえるのです。

ペンギンのインキ壺


2004年10月4日更新
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