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第三十七回『男十九歳×女七十歳、僕もいまだにブッ魂消げたままのセックス話。』似顔絵


 何ともコレ、ブッ魂消げてしまった。と言っても、最近のレトロブームの中、一九七〇年代にアイドル中のアイドル白雪姫へ熱い追っかけ視線を送った中高年の思い出をズタズタ粉々にブチ壊して、久々にテレビ番組でヒーハラホレと歌っていた天真理の話ではなくて、八十歳になる父の天晴れ話である。
 父の昔の仕事上の武勇伝や元気話を聞かされることは多く、先日、僕とそれ程違わない五十五歳の頃の父がセックスを毎晩と豪語していたと聞かされ、とんでもない元気話にブッ魂消げてしまった。
 当然、息子としてはどう反応すればいいものかと迷いながら、結局、赤面。大概は仏頂面で過ごしていたあの頃の父の毎晩アレ自慢は余りにも意外で首筋が汗でジットリする程驚かされたが、さすが大正十三年生まれの昭和元気オヤジである。
 小柄ながら旧制中学時代はバスケットの選手で手術と言えば盲腸しか経験がないといった健康話も、父のナニの立派具合も見て知っているが、夜もソコまで元気が良かったことまでは知らなかった。ナニを弄らず、神経を酷使するコンピューターばかり弄る生活から性不能になるといった時代、五十歳前後の僕の仲間内でも週二回はいても毎晩セックスと言う絶倫話は聞かないから、父の天晴れ話には恥と言うより感心してしまった。
 ところで、ブッ魂消げた話と言えば、実は三十年以上昔の話にはなるが、雑誌・太陽に掲載された有名ポッチャリ肥満系SF作家のセックス経験話に、父の五十五歳毎晩豪語話以上に驚かされた話がある。
 宇宙の不思議から始まるその話、生命の不思議や女性は死んで灰になるまでセックスが可能話まで書かれていたのであるが、五十五歳になる現在でも僕にはそのSF作家のセックスが強烈過ぎて理解できないでいる。
 東北、十九歳の冬の旅だったと思う。彼が大学生時代に一晩泊めてもらった民家で、早くから夫を失い一人暮らしをしているお婆さんとセックスしたと言う普通では考えられない性体験話が書かれていた。
 夜になって道に迷った彼は、いよいよ自分はこの暗い荒野で死ぬかも知れないと命の儚さを思いながら迷い歩いていた所に一軒の民家の灯り。そこに住むお婆さんに命を救われた彼は、貧乏学生の自分にはお礼に渡すお金がないことを理由に体でお礼をと言ってセックスをしたのであるが、その何十年振りかのセックスにお婆さんは歓喜しながら冥土の土産話ができたと手を合わせ涙を流したと言う。
 女は灰になるまでセックス説の実感話であるが、彼目身、忘れられない程満ち足りた最高のセックスだったそうであるから、ソコラ辺も、現在でも僕にはチョットこれどうなんだろう話なのである。
 場所が東北とは言え、万博・札幌オリンピック・グループサウンズ・桜田淳子・パンダ初公開といった頃の昭和の話。それもオバさんではなくてお婆さんと僕が記憶している表現から七十歳前後と思われるそのセックス年齢から言っても強烈な感じで、僕など当然コレ、あの映画楢山節考で描かれた激しいセックスくらいの滅茶苦茶話に感じた。
 普段は滅多にその話を思い出すことはないのだが、偶にある家内との一戦を終えた翌朝などにべッドの中でふと思い出して、七十歳のアソコの湿り具合や包み込む肉襞の弾力を想像するが、万の想像より一度の経験といった所。乾燥襞でスカスカの挿入感ばかりが思い浮かび、十九歳の男が忘れられない程本当にそこまで快感モノなのかどうも凄く疑問に思えてならない。
 雑誌を読んだ当時の僕は、二十歳を過ぎてはいたがまだ女性経験のない大学生。女性とのセックスがマスターベーションと違いどれ程の感触なのか知らなかったが、例えセックス経験のある十九歳だったとしても、お礼の金がないからと言った理由から七十歳のお婆さんとのセックスはまず考えないだろうし、いくら何でも七十歳の体に欲情・勃起は絶対しないと思った僕は、既に恋人悦チャンとの週一生活を送っていたセックス経験では大先輩の佐藤君に、喫茶店でその話をした。
 ところがドッコイ、これまた意外な返事で、「自称五十八歳の厚化粧女性に温泉街路地裏で声をかけられ、その暗がりの中で十五分三千円の話に乗って女性の顔が見えない後背位セックスをしたツレもいるから、放出すさきから溜る十九歳やでぇ、セックスに自信があればデキるんとちゃう」と、ハイライトに火をつけ一呼吸。「それに、包茎手術後にマスかいても全然良くないっていう話聞くヤン。ソレはやネー、包茎で余っているあの薄い自分の皮が亀頭を擦る快感がマスやってん。皮とったら全然らしいからスパッと手術しないヤツもおるんや。七十歳のアソコ、あの皮の感触と似てたんと違うノン」と、佐藤君はタバコの灰を指で軽く落としながら僕に言った。

ムー一族,郷ひろみ,樹木希林

 SF作家のセックスにブッ魂消げてから数年後、丁度、変なテレビドラマ 「ムー一族」が凄い人気で郷ひろみと樹木希林の異色コンビが細い縞柄のつりズボンに懐かしい月光仮面風サングラスをかけたド派手な格好で歌う「林檎殺人事件」が宴会で歌われた頃、SF作家の場合とは全然違うが、僕にチョットした据え膳事件があった。忘年会の後、誘われるまま僕は一緒に銀座から会社の先輩の住む金沢八景まで行った夜の話である。
 深夜、その夜初めて紹介された女性にズボンの上からナニを撫で摩られ誘惑されたわけであるが、女性経験も大して豊富でもなく逆夜這い風モーションを女性からかけられたのが初めての僕は気分も冷め焦るだけで、セックスなど到底無理のままコトは終了。
 翌日、女性に大恥をかかせたと仕掛けた先輩から随分悪く言われ、何で頼んでもいない僕がと納得できなかった据え膳事件だったのであるが、ムッチリ据え膳が食えなかった僕に据え膳でもないシワシワ七十歳膳が食えるわけがないと、やはりあの時も実感。最初から高齢者とのセックスが目的の旅ではなかったはずで、既にアガり切って潤滑液不足で挿入に苦痛を訴えるはずの七十歳の体を歓喜させたSF作家十九歳のセックスも、ごく普通の単調なセックスしか経験のない僕には微妙に謎である。
 若い頃に偶々雑誌で読んだSF作家のセックス経験話にプッ魂消げてからもう随分になるが、五十歳の家内で十分コレ精いっぱいの夜を過ごしている僕には、父の天晴れ話以上に凄い十九歳の時に七十歳とお礼のセックスをしたと言う嘘のような性体験が今でもブッ魂消げたまま心に引っかかっていて、昨夜も、それこそ冥土の土産の迷宮入り話になるかも知れないと思いながらのコーヒーを飲んだ僕である。


2007年7月19日更新


第三十六回『十代の頃、ペニスケア使用の塗り薬は、メンソレータムと、福ちゃんも愛用・松山容子が宣伝していたオロナイン軟膏だった。』
第三十五回『ラジオの深夜放送をBGMに、セックス話で股間グッショリ。また懲りずに、<女性経験>を鼻息荒く聞いた冬休み帰省前深夜』
第三十四回『偶然のラッキー。超懐かしの娯楽活劇、月光仮面をみる。』
第三十三回『ポコチンの先に、赤い粒々できてんねん困惑も、包茎モノ的普通の汗疹だったトンちゃんの<性病やろか>事件。』
第三十二回『レトロブームの中の輝き、熟したはしだのりひことロッテ歌のアルバム。』
第三十一回『十九歳の僕、エルトン・ジョンを聴いていた頃。』
第三十回『芸能界情報月刊誌「平凡」と言えば、必見、若い性の悩み相談だった。』
第二十九回『中学生の頃は、東宝。それも<ゴジラ>ではなく、怪奇特撮映画の<マタンゴ>に大痺れ。』
第二十八回『四十年後、「タッチ」のあだち充君からの葉書と武蔵野漫画研究会。』
第二十七回『コタツ台に古毛布とくれば深夜マージャンとなって、どうやろの青春包茎話』
第二十六回『勿論、台は手打ち式。百円玉一枚でも真剣勝負の青春パチンコ。』
第二十五回『生本番ショー二万円への誘いも懐かしい、S荘の質素な青春。』
第二十四回『福チャンの告白。悶絶級・昭和パイプカット秘話。』
第二十三回『スーパーマンと言えば、懐かしい白黒テレビの無敵スーパーマン、ジョージ・リーブスが僕のイチ押し。』
第二十二回『僕の憧れ一九七二年の南極ワイフも、パックリ見せて十五万円也。』
第二十一回『テーブルにココア、今夜はもう一度、ミステリーゾーン気分。』
第二十回『昭和四十六年の白黒ポルノ映画と、露骨裏ビデオ。』
第十九回『青春大ショック、芸能界スター・美容整形の噂を知った日。』
第十八回『当たる不思議「私の秘密」と、死ぬほど笑った「ジェスチャー」の頃。』
第十七回『欧陽菲菲と膀胱炎でヒーヒーの僕と、NHK受信契約騒ぎの日。』
第十六回『微妙にウタマロ、チン長十四センチのセックス満足度』
第十五回『コンドームと僕と、正常位』
第十四回『再会、また一つ。僕のテレビに懐かしの少年ジェットが来た。』
第十三回『ユーミンとセックスと鎌倉、僕の二十七歳の別れ。』
第十ニ回『シロクロ本番写真と五本の指』
第十一回『永遠のオナペット、渥美マリ』
第十回『ジェームズ・ボンドのセックスとナニの話』
第九回『二十一歳の冬、僕とフォークと喪失と。』
第八回『大阪スチャラカ物と言えば、てなもんや三度笠で決まり。』
第七回『嵌った嵌った、森繁の社長シリーズとアレコレ』
第六回『ジュンとネネではなく、VANとJUNの話』
第五回『夏は怪談映画、あの映画看板も僕を呼んでいた。』
第四回『青春マスターベーション』
第三回『ワッチャンの超極太チンポ事件』
第二回『中高年男性、伝説のモッコリ。スーパージャイアンツ』
第一回『トランポリンな僕のこと、少し話しましょうか。』


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