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第20回ギンビス
「アスパラガス」は
野菜がモデル?の巻
日曜研究家串間努
ギンビス「アスパラガス」

 スーパーの食品売り場を歩いていたら、ギンビスの「アスパラガス」が、『30周年』という文字をつけたパッケージで並んでいた。そうか、もう発売されて三十年にもなるのか……。「アスパラガス」にちなむ小学校時代の思い出がよみがえってきた。
 四年生のとき、千葉県銚子市の犬吠崎灯台と醤油工場見学にいったときのことだ。その時乗車した観光バスは網棚がなかったのか、リュックサックは一番後ろの席、五人掛けのソファに積むことになった。リュックには弁当と遠足のおやつが入っている。一番下に積まれるのは避けたい。そう思ったが、誰でも考えることは一緒。結局クラスで力を持っているグループが一番上に載せ、その他の者が下積みとなった。だが、頭がいいやつはいるものである。「先生、ちり紙をとってきたいです」といって下敷きとなったリュックを救出し、ちり紙をとったあと山の一番上に戻すのだ。私もそれにならって「ジュースがとりたい」とかいって、一番上に載せ直した。だが、お弁当の時間にリュックを開けると、飴や「ジューC」は無事だったが、「源氏パイ」と「アスパラガス」は砕けていた。実は一番上に載せたリュックは、バスがブレーキをかけるたび、慣性の法則で何度も床にドスンドスンと落ちていたのだ。一本が三分の一くらいずつにひび割れた「アスパラガス」を食べながら、私は切ない思いだった。

ギンビス

 ギンビスに話を聞きにいってわかったのだが、「アスパラガス」は『30周年』と銘打ってはいるが、本当は今年三十二周年。パッケージを変えていないだけだそうだ。ありゃ。サバを読まれてしまったか(笑)。
 「昭和四十年頃にはもうあったと思いますが、最初はトレイ入りでした。四十二年頃から手で袋詰めを始め、四十三年に機械化して現在の巾着袋詰めになりました。アスパラガスは入っていません。形からアスパラガスと名付けたのです」と昭和四十三年当時、古河工場でアスパラガスを作っていた株式会社ギンビス相談役は笑う。
 従来、ビスケットの形は円形や楕円形など平らなものが多かったので、それにとらわれず、変化のある形を開発しようと棒状ビスケットが開発された。ただ細長いだけでは面白みに欠けるとして一捻りしたところ、茎のように凸凹ができアスパラガスに似たものができた。まだ、野菜のアスパラガスは高価なころで、高級感をアピールする意図もあった。なかには勘違いして「北海道のアスパラガスが入っているんですか」というエピソードも生まれた。そりゃそう思うよね。
 昭和四十年代前半、菓子は対面販売による計り売りから、大量生産の袋菓子への転換期であった。メーカーもこれに対応してグラム単位のバラ売りから、小袋・箱詰めタイプに包装を変更する。ギンビスも「アスパラガス」を発売するにあたり、色々なパッケージで試売した結果、現在の巾着タイプがユニークで高級感溢れるものとして人気が高かったので採用した。
 発売と同時に大ヒットし、昼夜を問わず生産しても注文に追い付かず、問屋さんが工場まで車で製品を引き取りにくる状態が長期間続いた。これまでに「ミニアスパラ」や「白ごま&黒ゴマ」など、バリエーションも広がった。
 「不況の中で製菓業界全体は売上が落ちていますが、各社が持っているロングセラー商品の売上だけは減少していません。アスパラガスも微増中です」。
 ステックタイプで食べ易く、一度手に取ると後を引いてあきない。変わらぬデザインはロングセラーの安心感があり、年配の方にも人気だ。健康に良いゴマを増量したりカルシウムを強化しながら、今日もアスパラガスは菓子売り場の店頭で、ファンの手が伸びるのを待っている。

毎日新聞を改稿


2005年3月30日更新
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