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「蕩尽日録」タイトル

南陀楼綾繁

7月某日 炎天下中ニ古書店ヲ巡リ、仏蘭西料理ニ舌鼓ヲ打ツ事


 猛暑の日々が続く。土日はなるべくウチにいて、少しでも体力を温存したいのだが、ナゼか出かけることになってしまう。一度出かけると、一カ所でも多く逍遥して蕩尽したいと思うのが、貧乏性の悲しさ。一昨日は神保町の古書展、昨日は高円寺の古書展に行ったのに、今日もまた、炎天下を中央線方面に向かって出発する。

 吉祥寺で降り、南口にしばらく前にできた〈よみた屋〉へ。この店は、もともと阿佐ヶ谷と西荻窪にあり、安くてイイ本を置いてあるので、愛用していた(その後、西荻は撤退)。吉祥寺にできたらしいとは聞いていたが、最新の『全国古本屋地図』にも掲載されておらず、場所がよく判らなかったのだ。

 しかし、古本雑誌「彷書月刊」のサイトではじまった、ライターの岡崎武志さんの日記を読んで、スグに場所が判った。岡崎さんは東京中の古本屋を回り、100円均一の棚から掘り出し物を拾い出す名人なのだが、中央線にはとくに詳しく、できたばかりの店もいち早く回っている。場所もきちんと書いてあるので、後追いするのにはとても便利だ。古本屋めぐりの先輩による情報性たっぷりの日記を読んで、たちまち吉祥寺に行きたくなったというワケだ。

 で、〈よみた屋〉だが、公園口を出て、井の頭通りを新宿方向へ3分ぐらいのトコロにある。入った瞬間、「この店は広いぞ」とカンジさせる。入り口付近の古雑誌コーナーには、最近のサブカル雑誌に混ざって、戦前の婦人雑誌や終戦後のカストリ雑誌もあった。棚はいちおうジャンル別に区切られているが、ところどころに「ナンでこんな場所に?」と思わせる本があり、それがまた欲しい本だったりする。こういう店は見終わるまで、気が抜けない。30分掛けて買ったのは、上野昂志『巷中有論』(白夜書房)700円、今日出海『私の人物案内』(中公文庫)250円、それと1978年創刊の『コスモコミック』(サンポウジャーナル)創刊号から第3号まで、各1000円。

コスモコミック 『コスモコミック』なんてマンガ誌があったこと、いまは知られてないだろう。石森章太郎、上村一夫、真崎守、赤塚不二夫、さいとうたかをなど大家を揃えた月刊誌だ。ぼくはこのなかに、河原淳が「快楽的文章読本」というエッセイを連載していたのが読みたかった。三号までに宮武外骨、酒井潔、梅原北明といった戦前の文筆家を取り上げている。イラストが赤瀬川原平というのもイイ。ホントは、いまぼくが調べている池田文痴菴を書いた号が入手したかったのだが、それは置いてなかった。残念。この雑誌、どんなヒトが編集したのかと奥付を見てみると、「編集人・坂崎靖司」とあって、ぶっ飛ぶ。『東京本遊覧記』(晶文社)などの著者で、風流なコレクターとして知られる坂崎重盛さんの若き日の仕事だったのだ。もっともこのヒト、フリー編集者として古くから活躍していたようなので、マンガ雑誌のひとつやふたつ手掛けていても、別にフシギはないのだろうが。

 岡崎さんの日記によると、この店の近くにも支店ができたらしい。店内のどこにも案内がないので、会計のときに聞いてみると、「〈よみた屋〉とは別の店名なんですけど……」と、場所を教えてくれる。末広通りを西荻方向に約5分間歩いたところに、その〈アーカイヴ〉を発見。建物の前に広いスペースがあって、そこに本を詰めた木箱がいくつか、無造作に置いてある。なかの本は全部100円。さっそく、戸板康二『むかしの歌』(講談社)、枝川公一『ふりむけば下町があった』(新潮社)を手にする。店内に入ると、倉庫みたいなところに本棚を置いたカンジである。内装などまったくやってないし、音楽も掛かってない。〈よみた屋〉チェーンで売れない本を置いている店なのか、雑本だらけだが、ナニしろどの本も安い上に、全点20パーセントオフのセールをやっている。駅から離れているせいか、入ってくる客もおらず、店番の女性と二人だけ。20分ぐらい掛けて、ゆっくり見て回る。田村紀雄『アメリカのタウン誌』(河出書房新社)500円、広津和郎『誘蛾燈』(角川小説新書)200円を買う。いずれも定価の20パーセントオフ。

 さて、そろそろ荷物が重くなりだした。ココで吉祥寺駅まで戻ってJRで西荻に行くか、このまま西荻まで歩くか、しばらく考えた。もうかなり駅から離れたトコロにいる。岡崎さんの日記でも、この〈アーカイヴ〉から歩いて西荻まで行ったようだ。ぼくも以前は西荻にいたから、だいたいの距離は判っている。ちょっと風も出てきたことだし、歩いて歩けないこともないだろうと、西荻に向かって歩き出す。……その5分後、すっかりへたばって、後悔している。普段ならともかく、こんな暑い日にムリして歩く必要はなかったのだ。しかも久しぶりに歩いたので、ちょっと遠回りしたみたいだ。さらに10分歩き、やっと西荻に出る。

 かなり疲れてるけど、せっかくだからと古本屋を数軒回る。〈ブック・スーパーいとう〉でマンガを2冊、〈花鳥風月〉は覗くだけ。まかせなさい 西川のりお主義〈音羽館〉では、今東光(さっきの今日出海の兄)『東光金蘭帖』(中公文庫)500円、『まかせなさい 西川のりお主義』(双葉社)、『わんだーらんど通信』(川崎ゆきお大特集)1500円を見つけ、買う。『まかせなさい』は、やはり岡崎さんのエッセイで、編集・イラスト・写真・デザインに旧『プレイガイドジャーナル』関係者が集結した本だと紹介されていて、それからずっと探していたものだった。西川のりお本人には、ゼンゼン興味がないので、1000円は高いといえば高い。でも、いつか『ぷがじゃ』について書きたいと思っているぼくには必要な本なのだ。買っとくしかない。

 4時半になったので、ほかの古本屋はあきらめて、南口の〈サパナ〉へ。ライターの北尾トロさんが9月30日までの三カ月間、ココを借り切って、「北尾堂ブックカフェ」という期間限定の古本ショップを開いている。ミニコミを置きませんか、と誘っていただいたので、今日はその納品に来たのである(だから、古本を買う以前にすでに荷物が重かった)。店内は狭いけど、壁面をうまく使って、一冊ずつ本を見せている。真ん中のテーブルにミニコミを置き、手書きのPOPを立てる。後から来た、餅屋ブックの折田烈さんも同じようにして、できたばかりの藤本和也『ふらふらふらり』第二部を置いている。この本、ひょんな縁でぼくが解説を書かせてもらったので、売れるとイイがと思う。北尾さん手づくりのパンに野菜などをはさんだのをご馳走になり、しばらく話してから辞去する。今日は、さらにまだ用事があるのだった。

 荻窪に移動し、南口の古本屋へ。〈古書銀河〉で、新井静一郎『ある広告人の記録』(ダヴィッド社)100円などを買い、〈竹中書店〉〈岩森書店〉を見ると時間切れ。あと一軒、〈ささま書店〉だけは行っておきたかったけど、まァ、すでに10軒近く回ってるんだから、また今度にしよう。丸の内線で新高円寺へ。駅を出て新宿方面にスグ、伊勢丹クィーンズビルの隣のビルの二階に〈レ・プリムール〉というフランス料理店が、10日前にオープンした。ココのオーナーが前にやっていた高円寺の〈牛舎〉という居酒屋は、料理がやたらめったらウマくてボリュームがある店だった。その成尾さんとガールフレンドのシュリさんが開いた店だから、旬公(ヨメ)と、チェコ人の友達ラデクと三人で期待して出かけた。世の中のすべてのシャレたものに憎悪を感じる性質なので、フランス料理なんて食べたいとも思わなかったが、この店で食べたお任せコース(3500円)は、一品一品が手が掛かっていてウマいのと同時に量が多く、焼肉食べ放題で元を取ったときのような満腹感を味わった。まだオープンしたばかりなので、お客も少なく、いまのうちに通うのがイイかもしれない。食べ終わると9時半。吉祥寺から新高円寺まで、たっぷりと歩き回った一日だった。

★南陀楼綾繁からのお知らせ

個人出版社「餅屋ブック」の新刊マンガ『ふらふらふらり第二部』

「焦りと逡巡と希望的観測がたっぷりミックスされた、コレは恥ずかしくて懐かしい青春の物語なのです。」
−−南陀楼綾繁

ふらふらふらり一部で高い評価を得ている、藤本和也の青春マンガ「ふらふらふらり」待望の続編が、7月15日に刊行されました。1997年に発表されていた2話分に約60ページの書き下ろしを加えました。入魂の解説は南陀楼綾繁。先着特典として、初回100部には書き下ろしの短編「美しひしらべ」を収録したB7版ミニマンガがついてきます!

『ふらふらふらり第二部』定価 600円+税 A5版/120ページ

中野・タコシェ、西荻・北尾堂ブックカフェのほか、「餅屋ブック」サイトでも注文受付中。マンガのサンプルも見られます。
http://www.mochiya.nu/mb/index.html


2002年8月20日更新
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6月某日 W杯ノ喧騒ヲ避ケ、三ノ輪ノ路地ニ沈殿スル事
6月某日 昼ハ最高学府ニテみにこみノ販売法ヲ講ジ、夜ハ趣味話ニ相興ジル事
5月某日 六本木ニテ「缶詰」ニ感涙シ、有楽町ニテ「金大中」ニ戦(オノノ)ク事
4月某日 徹夜明ケニテ池袋ヘ出、ツガヒ之生態ヲ観察スル事
4月某日 電脳機械ヲ購入スルモ気分高揚セザル事


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