「まぼろしチャンネル」の扉へ
「番組表」へ 「復刻ch」へ 「教育的ch」へ 「東京カリスマch」へ 「日曜研究家ch」へ 「あった、あったch」へ 「再放送」へ 「ネット局」へ
ら〜めん路漫避行
まぼろし書店・神保町店
少女漫画 ふろくの花園
帝都逍遙蕩尽日録
定食ニッポン
駅前ガラクタ商店街
日本絶滅紀行
怪獣千一夜
秘宝館
掲示板
マガジン登録
メール
まぼろし商店街
まぼろし洋品店

「蕩尽日録」タイトル

南陀楼綾繁

6月某日 W杯ノ喧騒ヲ避ケ、三ノ輪ノ路地ニ沈殿スル事


 今日は、ワールドカップ予選リーグで、日本とロシアの試合がある日だ。仕事場の近くに昼飯を食いに行くと、あとから入ってきた三人組の男たちが、今日の試合をドコで見るかを話し合っている。結局、会社を抜け出して、カラオケボックスに集まり、そこのテレビを見るというコトで衆議一決したらしい。

 そんなに見たいのモノなのかと、呆れて仕事場に戻る。しかし、ココでも3時前になると、サッカー好き何人かがウロウロと落ち着きをなくしはじめる。悪いことに、テレビは一台だけ、ぼくの机の真後ろの会議室に置いてある。試合開始前からテレビはつけっぱなし、何人も出たり入ったりでうるさく、すっかりヤル気を失う。

 どっかW杯にカンケーない場所に行きたいと思い、打ち合わせと称して神保町に向かう。大雨の日にも古本屋に群がるオヤジたちがいる、あの「本の街」ならサッカーなんて影もカタチもないだろうと思って。でも、アマかったよ。駅を出た交差点にあるディスカウントショップ〈キムラヤ〉の前には、小さなテレビを囲んで20人ぐらいヒトが立っていた。靖国通りの書店も喫茶店も、外から覗くとどこでも試合の中継を見ている。神保町よ、お前もか。

 逃げるようにして、すずらん通りの〈書肆アクセス〉へ。地味な本を扱う小さな書店だし、いくらなんでもココではサッカーに無関心だろうと思いきや、店内にはラジオ中継の音声が。思わず、「ああ、ココでもワールドカップかァ」とため息をつくと、店長の畠中さんが「サッカー、嫌いなんでしょ」とニヤリ。悪かったな。べつに、サッカー嫌いってワケじゃない。今回のワールドカップは何試合かテレビで見て、じっくり見るとけっこうオモシロいもんだなと思った。でも、こんなに全員で集まって大騒ぎする必要があるんだろうか? 桝居孝『雑誌「少年赤十字」と絵本作家岡本帰一』(竹林館、952円)を買って、店を出る。小川町まで歩くあいだに点在するスキー用品屋の前には、全部テレビが設置してあり、数十メートルごとに人だかりができていた。

 新聞に出ていたが、山形県庁では日本戦のあいだ庁内のテレビをつけることを禁じ、一方、バンダイはどうせ仕事にならないからと、その時間中、全社でテレビ観戦することにしたらしい。記者の論調は、お役所はヤボで、バンダイは粋だというカンジだったけど、平日なんだから、見たければ休んで見ればイイというのはきわめて正論だと思うけどね。ウチに帰り、テレビをつけると、日本が勝っていた。

 さて、W杯よりもコッチには重大な心配事があった。あるマンガの解説を頼まれているのだが、締め切りをはるかにオーバーしていまだに書けず、発売日が遅れそうになっているコトだ。書きたい内容は決まっているのに、文章がなかなか先に行かないのほどイライラすることはない。ウチにいても書けそうもないので、パソコンを持って外に抜け出す。

都電荒川線の終着駅、三ノ輪橋三ノ輪橋商店街

 浅草行きのバスに乗って、大関横丁で降りる。そこから都電荒川線の終着駅、三ノ輪橋を通って、商店街に入るのだが、その手前に「極楽荘」という二階建てのアパートがある。極楽荘前庭がだだっ広くて、隅にお稲荷さんがあったりするのもイイ。そこから「ジョイフル三ノ輪」に入る。ついこの前、散歩の途中で見つけた商店街だけど、古くからの活気のある通りで、とても気に入った。肉屋に惣菜屋、漬物屋と食欲をそそる店が並ぶ。明治期からやってるという蕎麦屋〈砂場〉もある。こないだは、漬物屋でらっきょう一袋買った。今日は買い物はしないつもりだったが、餃子屋で生ギョーザを一パック買う。それにしても、この商店街、まったくワールドカップの気配が感じられず、落ち着くことこの上ない。そうだよねえ、別に東京で試合やってるワケじゃなし、関係ないんだから。

 いちばん端にある〈宮橋古書店〉で推理小説を買い、南千住の方へと歩く。その先に老舗のうなぎ屋〈尾花〉があると聞いたから、場所だけでも見てみようと思ったのだが、見つからず。そのあと大関横丁に戻って、東日暮里のほうをウロウロ。いいカンジの店があったらちょっと入ろうと思ったけど、適当な店にブツからなかった。そうこうしてるウチに一時間。そろそろ原稿に掛からねばマズイので、〈ジョナサン〉に入り、一時間ぐらい頑張ってみる。どうやら取っ掛かりみたいなのが見えてきて、キリがいいところで店を出る。

 途中、マンガ中心の古書店を覗き、荒川区役所まで歩き、お目当ての居酒屋に入ろうとしたら満員。当てが外れた。仕方ないので、道を渡って、以前から店名が気になっていた中華料理屋〈ハルピン〉に入る。「ハルピンラーメン」を頼んだら、卵とじのタンメンみたいなのが出てくる。けっこうウマイ。バスに乗ってウチに帰り、一休みしてから、二時までかかって原稿を完成させる。


2002年7月25日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com まで


6月某日 昼ハ最高学府ニテみにこみノ販売法ヲ講ジ、夜ハ趣味話ニ相興ジル事
5月某日 六本木ニテ「缶詰」ニ感涙シ、有楽町ニテ「金大中」ニ戦(オノノ)ク事
4月某日 徹夜明ケニテ池袋ヘ出、ツガヒ之生態ヲ観察スル事
4月某日 電脳機械ヲ購入スルモ気分高揚セザル事


「カリスマチャンネル」の扉へ