「まぼろしチャンネル」の扉へ
「番組表」へ 「復刻ch」へ 「教育的ch」へ 「東京カリスマch」へ 「日曜研究家ch」へ 「あった、あったch」へ 「再放送」へ 「ネット局」へ
子どもの頃の大ギモン掲示板
懐かし雑貨店「アナクロ」
ノスタルジー薬局「元気ハツラツ本舗」
思い出玩具店「昭和ニコニコ堂」
チビッコ三面記事
「秘密基地」の時代
まぼろし第二小学校
珍商売あれやこれや
秘宝館
掲示板
マガジン登録
メール
まぼろし商店街
まぼろし洋品店

「秘密基地」タイトル

第20回「野球のボールを作ったのは誰だ」の巻

日曜研究家串間努


軟球 多くの人にとって、子ども時代の野球体験は軟球だろう。一生を通しても、硬球でプレイしたことがあるなんて人はかなり少ないハズだ。「軟球、軟球」というからとても柔らかいのかと思ったら、結構、痛烈なライナーが体に当たると痛い。
 私たちがやっていた、空き地での野球もどきは、「ハンドベースボール」というもので、テニスで使うぷよぷよとしたゴムボールを手や木っ端で叩いていた。野手が次塁上で捕球するだけでなく、走っているランナーにボールを当ててもアウトがとれるという殺人ルールであり、当然、ケンカが絶えなかった。
ゴムボール あのころはあちこちに軟球やゴムボールが落ちていて、遠くに飛んでいったボールを田んぼに探しにいくと、逆に2〜3個増えて戻ってくるヤツもいた。「ボールとらせて下さ〜い」と黄色い声をあげると、カキやみかんを持たせてくれた近所のオバサンもいたっけな。
軟球は自転車のスポークの中心(ハブ)あたりにはさんでいたから、どこにでかけても人数さえいればボール遊びはできた。
 軟式野球ボールを発明したのは実は日本人。大正九年に鈴鹿栄商店が「少年野球用毎日ボール」と「児童ボール」を発売したとの記録が業界紙にある。調べてみると、大正五年に京都市内で文具・書籍店を経営していた鈴鹿栄氏が、市内の小学校教師たちで結成した京都少年野球研究会に参加したことから始まった。彼は自分の息子が病弱だったので野球が体にいいのではと思って参加したのだ。
 折しも前年の夏から全国中等学校野球選手権(甲子園)が始まり京都二中が優勝したことで、京都では野球が流行していた。しかし硬式のボールは高価であるし、当たると痛い。そこで子ども用のボール製造研究に野球研究会が着手したのだ。鈴鹿氏は店先に脱ぎ捨ててあったゴム靴の裏面を見て、「滑り止めのブツブツがいいな」と考え、二年後に凹凸をつけたボールとして完成した。さらに改良を加えて大正九年に発売にいたった。
軟球戦後、子どもの間では野球が大ブームになった。
後楽園球場の入場者数では、昭和二十五年の年間のべ人数は二四三,五七一名、総入場者数のおよそ一五%だった。
昭和二十二年の文部省の調査では、こどもが面白かったあそびは「野球、かくれんぼ、魚つり、キャッチボール」三年生から六年生では野球が、都市、脳漁村を問わず第一位である。小学生が好きなものの調査では球技、水泳、陸上競技、ダンスの純であり、子どもはまずボール遊びが好きである。そして、勝負が決まる、投げる打つ走るなど変化がある、集団競技でありながら個人の技能も必要で個人がバッターとして働く場が用意されている、道具が簡易、肉体エネルギーを他のスポーツより消耗しないという点で子どもに野球が好まれた。読売、毎日など新聞社と一致しているため、宣伝が多かった。アメリカの子どもはバスケットやフットボールが人気だった。バスケやフットは地味だが、野球はファインプレイや、ボス的支配ができるので日本人にあっていたのではという示唆もある。プロ野球も義理人情と徒弟制があり、合理的ではない。
 軟球が野球の大衆化に果たした役割は大きい。平成十五年にその功績が認められ、野球殿堂入りを初めて軟式野球から果たしたが、ある意味、「少年野球の父」である。

はるかを改稿


2006年3月9日更新
ご意見・ご感想は webmaster@maboroshi-ch.com まで


第19回「もういくつ寝るとお正月」の巻
第18回「走れ! ピンポンダッシュ」の巻
第17回「近所に出没したアヤシイひと」の巻
第16回「子ども会っていつからあるのか」の巻
第15回「子どもの移動距離と文化の深浅」の巻
第14回「あなたは塾にいきましたか」の巻
第13回「食べものを奪い合う子どもたち──カラーそうめんの希少価値はどこへ」の巻
第12回「いじるな、子どもは、レコードを」の巻
第11回「吹き矢でプー」の巻
第10回「くじ」の巻
第9回「カラーヒヨコがピヨピヨ」の巻
第8回「子どもの笑いのセンス」の巻
第7回「銭湯の下足札」の巻
第6回「日曜日のおでかけで作った綿菓子の甘い想い出」の巻
第5回「むかし日本の空き地には鬼がいた」の巻
第4回「マッカチンを知らないか……ザリガニ釣り」の巻
第3回「シスコーン、即席ラーメンの生喰い」の巻
第2回「落とし穴と犬のフン」の巻>
第1回「キミは秘密基地で遊んだか」の巻


「日曜研究家チャンネル」の扉へ