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日曜研究家串間努

第18回
「電子」の時代の申し子の巻

象印ヂャーマホー瓶のロゴ・マーク



 遺伝子治療や遺伝子組み換え作物など、いま、遺伝子が注目されている。だが、昭和四〇年代は「電子」の時代であった。学研は科学玩具「電子ブロック」を出し、サンスター文具はカギがかかる筆箱に「電子ロック」と命名。そして「象印電子ジャー」は発売三〇周年を越えた。

ファンシーヂャー

 象印といえば、日曜夜に放映されていたNET(現在テレビ朝日)の「象印スターものまね大合戦」という番組が頭に思いうかぶ。玉置宏が、司会を務めていて、ピーターや三善英二など流行歌手が、他の歌手の持ち歌をものまねで歌っていた。この番組を通じて私は「フランシーヌの場合は」とか「雨」を知ったが、当時の歌はメロディが哀調を帯びていてとても暗かった。特に藤圭子の「夢は夜ひらく」を聞いたときにはドーンと落込み、明日月曜日の学校に行きたくなくなるほどだった。それを救ってくれるのが玉置宏の健康な笑顔で、番組の最後で出演歌手に賞を与えるときに「熱演賞!」「敢闘賞!」と賞名を宣言する。ただ、小学一年だった私は「関東賞」としか理解できず、のちに大相撲を観るようになって疑問が氷解した。

 一番良いのは「象印賞」で、これを叫ぶとき、宏の声は明らかに他の二つと異なっていた。それまで淡々と「熱演賞」と読み上げていたのに、急に何かに取り憑かれたようにハイテンションに豹変、「ぞぉぉじるぅししょぉー」とコブシを利かせて、喜びと驚きを叫ぶ。いったい宏に何が起こったのか。ブラウン管の前の私はびっくりして、アサリの味噌汁を吹き出してしまうのであった……。

L型

 昭和四五年に発売された「象印電子ジャー」は時代の申し子だった。炊飯ジャーがない時代は、ガスや薪でご飯を炊き、これをおひつに移していたがご飯がさめる。そのため魔法瓶メーカーとして著名な象印マホービンは昭和二八年からガラス製のジャーを発売した。ところがだんだん売れ行きが衰える。住環境が洋風化していき、食卓が畳の上のちゃぶ台からダイニングキッチンのテーブルに移行していったため、落下させると割れてしまうのである。また、ガラスのジャーは熱が冷めるのを遅らせるだけで保温力に限界があった。

 同時に、この頃から女性の社会進出が進み、共働き世帯が増えていた。
 「朝炊いて、昼食べないからご飯が余りますよね。ガラスのジャーだと冷たくはないけど、やはり風味が落ちます。でも朝夕二回炊くのも面倒くさい。夕方、家族全員が揃ったとき『おいしいご飯が食べたいよね』というユーザーのニーズから電子ジャーを開発しました」(象印マホービン株式会社)
 ガラス製ジャーの機能的な欠点を補い、社会的要請に応えるため、電子ジャーが誕生したのだ。

 「電子」をうたっているのは半導体を使っているからだ。ジャーに電気を通すとポジスターという高級半導体が発熱し、自分で七〇度という適温を感知して保温を続ける。当時ガラスのジャーは四、五千円だったのに電子ジャーは約一万円。高級感はあったが、高度経済成長で消費者は購買力があり、高くても「おいしいご飯を家族に食べさせてあげたい」という主婦の気持ちをつかんでヒットした。炊飯釜とジャー、二つあると場所もとるので昭和四九年には合体させて炊飯ジャーに発展した。
 魔法瓶メーカーだった同社の製品は現在、魔法瓶二割で電気製品七割。生活用品総合メーカーへ脱皮したきっかけが電子ジャーだった。この商品を開発したことで「家庭のコミュニケーションをはかるお手伝い」が同社のキーワードになったのだ。電気ポットがティータイムを演出し、ホットプレートで団欒を目指す。現在、売れ行きは炊飯ジャーに押されているが、同社の歴史を変えた商品として「二一世紀に残したい」という。

象印製品

毎日新聞を改稿


2005年3月31日更新
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