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「絶滅紀行」タイトル

田端宏章

廃墟巡りのススメ


 「高度成長期の落とし子」、「バブルの負の遺産」として日本各地に点在する廃墟を探して潜入する、いわゆる「廃墟巡り」がブームといわれています。ブームといっても、突然流行りだしたわけではなく、好きな人は20年以上も前からやっていたし、写真集だって80年代にも結構出版されていたのです。しかし、「廃墟」という言葉の認知度が高まった(あるいはその言葉が意識されはじめた)のはここ数年のことではないかと思います。廃墟
 私が編集・出版した『萬(ヨロヅ)臨時増刊号 緊急特集 廃墟の魔力。』は、マイナーなアングラ出版ながら、約2年で総販売部数1万に達しました。これは、タイトル通り「廃墟の魔力」に他なりません。しかも、これだけ多くの人々が「潜在的に廃墟を嗜好する趣味がある」ということがわかり、大変驚きました。この出版以降、TVや雑誌、映画関係者などの問い合わせが殺到。しかし、電話の内容はどこも同じようなものでした。「あの廃墟はどこにあるのですか?」
 本が出た後の2年間で、廃墟に関する展覧会も2回開きました。廃墟に関するグッズも多数制作して販売し、しかも廃墟で拾った物を会場で販売したりしました。私自身が廃墟人気にすっかり浮かれてしまっていたのです。そうした動きに反発もありました。「せっかく俺たちが静かに廃墟巡りを楽しんでいたのに、なんてことをしてくれた!」「廃墟を金儲けの材料にするな!」という声です。この声に私はハッと目覚めました。そして自己嫌悪に陥り、この2年ほど悩み続けました。そして、最近になってようやく一つの結論に達したのです。「廃墟の本やグッズはもう二度と出さない」と。これが、私が廃墟にできる精一杯の償いでした。
廃墟
 「廃墟巡り」は、けしてブームなんかではありません。否、ブームにしてはいけないのです。ブームは去る、が世の常ですが、廃墟だけは安易なブームで終わらせたくないというのが私の本音です。本当に好きな人たちが、ひっそりと楽しむところに「廃墟巡り」の醍醐味があると思います。廃墟を魅力に感じる理由は十人十色、千差万別。したがって、各々が責任を持ち、あまり騒がず静かに「廃墟巡り」を楽しんで下さい。
 そして、クリエーター(カメラマン、画家、映像作家など)を目指している皆さんに一言。廃墟を被写体にした作品を発表すると、自分の才能以上に評価されてしまうことがよくあります。その際は、思い違いをしないようくれぐれも注意して下さい。廃墟という被写体にはそれだけの魔力があるからです。

(たばた ひろあき 懐古文化綜合誌ヨロヅ 編集人)


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