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8.遠い世界に思いをはせて

加藤真名

母をよぶ歌


 年末年始やゴールデンウィーク、お盆の時期になると、成田空港の出発ロビーは海外で休暇を過ごそうとする人たちであふれかえります。その中には小さな子供を連れた家族連れも数多く、ニュースなどで「どこへ行くの?」「アメリカのディズニーランド!」と目を輝かせながらインタビューに答える子供たちの姿を目にすることがあるでしょう。社会人になってから初めてパスポートに出国のスタンプを押してもらった私からすると、その光景はうらやましい以外のなにものでもありません。この季節になるとテレビの前で、小学生のころから海外旅行ができるなんていい時代よね〜 とボヤキモードに入ってしまいます。

 旅行の行き先に海外を選ぶことは今や当たり前。しかし日本人が海外へ自由に旅行できるようになったのは昭和39年のことでした。映画やテレビドラマでいつも見ているあの場所に自分も行けるかもしれないと、人々の目はますます外国に向けられるようになります。しかし、翌年販売されたパックツアー「ジャルパック」は「ハワイ9日間37万8000円」「ヨーロッパ16日間67万5000円」と結構な価格。1970年代に入るとどんどん価格は下がっていったとはいえ、大卒初任給が約2万円のこの時代、庶民にとって外国旅行はまだ、なかなか手の届かないものだったです。

ポストカード・下じき・時間割表

 こういった世相も反映されていたのでしょうか。昭和40年代のふろくには、ポストカード、下じき、時間割表などに外国の風景や外国人少女をモデルとした写真がよく使われていましたし、本誌の漫画にも外国を舞台にした物語がしばしば掲載されました。読者の少女たちは美しい風景写真と、漫画に描かれる街の風景や「ジョージ!」「キャロル!」などと呼び合う登場人物のファッション、ライフスタイルを目にすることで、まだまだ遠い、外国への憧れをふくらませていたのでしょうね。

 少女たちの外国への憧れは、それだけにとどまってはいません。この時期、少女雑誌でよく取り上げられて話題になっていたものの一つに、ウィーン少年合唱団などの外国の少年合唱団がありました。天使の歌声と称される美しく清らかなハーモニーで広く知られている彼らは世界中で大人気。昭和30年代からはじまり現在も定期的に来日し、公演を行っています。その歌唱力だけでなく制服に身を包んだ団員たちの美少年ぶりに、同世代である少女たちは心を動かされ、彼らのファンになっていったのです。

 そんな彼女らに向けて、少女雑誌では団員紹介、グラビア、ブロマイドプレゼントなど様々な特集記事を組みました。もちろんふろくにも彼らの写真入りグッズが登場です。以下にその一例を。

・ウィーン少年合唱団トランプ(なかよし 昭和42年8月号)
・パリ 木の十字架少年合唱団ノート(なかよし 昭和42年11月号)
・ウィーン少年合唱団ノート(なかよし 昭和43年5月号)
・合唱団絵はがきセット(ウィーンの森少年合唱団、ウィーン少年合唱団 ほか)(なかよし 昭和43年10月号)

 その他にも、少年合唱団を題材にした漫画の別冊がありました。実在する合唱団の名前を借りたフィクションです。

少年合唱団を題材にした漫画の別冊

 合唱団のファンである日本人少女が、ひょんなことから合唱団の中でもエース格の少年と知り合い、心を通わせていく物語で、悩み事を抱えていてどこか影のあった少年が、少女のおかげで立ち直り「きみのおかげだ、ありがとう」という、まあよくある展開。今読むと、なんでこんな簡単に知り合えて仲良くなれるんだよ! とつっこみどころも満載なのですが、今の少女漫画とは違って決して前面にでてくることのない、ほのかにちりばめられた恋心がなんとも切なく、心洗われるような美しい物語でした。読者の少女たちは感動しながらも「私もこんなふうに合唱団の子と仲良くなりたい」とヒロインに自分を重ね合わせていたのかもしれません。

 これらの漫画を読み終わったあと、そういえば自分も少女時代に、同じようなプロ野球選手とのピュアなラブストーリーを脳内で展開していたなあ、となぜか気恥ずかしくなりました。芸能やスポーツ、同級生などその舞台となる世界はどうであれ、憧れの存在すなわち、自分にとってのスターに対して少女たちがつい夢見がちになってしまうのは、いつの時代も変わらないことを改めて実感したからなのでしょうか。

 次回は憧れの王道、芸能界のスターについて。


2003年12月2日更新
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