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「ら〜めん路漫避行」タイトル

第12回 千住のいじわる〜菊やもココ!

刈部山本

当連載に関連したB食町歩き本を年2回発行しているのだが(冬コミ[年末のミニコミ即売会]にいらしてくれた方ありがとうございました!)、これが掲載される頃には新刊が委託先に並んでいることだろう(委託先等の詳細は文末のお知らせ欄[ここをクリック]を是非みてちょうだい)。それを記念して、今回は新刊『千住迷宮物件』の中からダイジェストで千住路地裏徘徊をやってみますか?

北は北千住から南は南千住まで…と譬えられる程、東京では北部に位置し明確な場所のわからない都民が多い割りに名の通った町。日光街道の宿場町として、また戦前戦後は色街として栄えたことが影響しているのだろう。しかし近年、丸井が出来たことに象徴されるように、駅周辺の再開発のスピードは目覚しく、次々と大正末〜戦後にかけての建築物が消滅している。これを目の当たりにし、それらをつぶさに記録する必要性に駆られたのだった。今回はとりわけ、駅から少し離れた、日光街道と隅田川と荒川に挟まれたエリアにスポットを当てた。千住を関する6つの町には、赤線の面影や昭和的な商店街、興味深い飲食店が辛うじて残っているからだ。

ニコニコ商店街

千住大川町にはニコニコ商店街が東西に伸び、西は千住元町を分断している。多少シャッターが目立ち寂れた感は否めないが、古い商店建築が点在している。

商店街見取り図
金物屋

長屋造りのトコヤは1戸に分断されドテッパラを覆ったトタンが露出しているし、木造のなかなか立派な旧商店建築には戸にいっぱい時事ニュース的なイラストがビッシリ張り巡らされている。

トコヤ

ハリガミ建築
ハリガミ建築UP

千住といえば銭湯というくらい銭湯の多く残る町。キングオブ銭湯こと大黒湯やたから湯といった2大銭湯が目立ちがちだが、小さくともイカす銭湯も沢山あり、この商店街にも存在する。金の湯は入口が奥まっているので商店街からは電光掲示看板が誘うものの、実態はつかみづらい。商店街からは入口正面に向かう道があるのだが、横のドテッパラにあるコインランドリーの脇から入る路地がなんとも風情がある。こっちからをオススメしたい。

金の湯正面
金の湯サイド

ここは露天風呂がウリで、扉を隔てて小さくて天井が殆ど覆われているものの、若干の外気を感じながら湯船に浸かれる。なかなか面白かったが、個人的には屋内のジェットの座風呂が絶妙な設計で気に入った。単なるお湯だと思うのだがとっても温まる。またここは全体的に湯が熱すぎないのもいい。下町は常軌を逸する程熱いことが多いが、熱くとも身体がピリピリしない。なんてことない銭湯かもしれないが、なんだか魅力ある銭湯だった。

こうした商店の間に細い路地が無数に伸びている。ここから大川町の町に入り込んでみる。

商店街路地

大川町という名前からして隅田川端の町という印象があるが、荒川土手に隣接している町である。大川といえば落語などにも良く出てくる通り、隅田川の下流域を大川と呼ぶ。北区の岩淵水門より分岐する川を隅田川、明治末より建設された荒川放水路を現在荒川と呼んでいるが、元々は入間川を基点とする同一水系であり、それが俗に大川と呼ばれていたとしたら、荒川べりでも大川でOKなのだろう。
まぁそんなこたぁどーでもいいのかもしれないが、大川という響きには土地に根ざした土着性を感じる。そのせいか、大川町はこの千住界隈にあってとりわけ退廃感を感じる。川端の町ならではの空気感だ。路地の細さは界隈では特一級で、しかも青が眩しいトタン建築が目に付く。ここまでトタン建築が密集しているエリアは都内でも随一だろう。そのサビ具合、一朝一夕には出せない、その町の空気で錆びた風合いは芸術の域である。

トタン01

トタン03

トタン05
トタン10
トタン15
トタン17
トタントマソン
トタン22空き地

トタン06

トタン14長屋パース

また路地には錆びた電柱に裸電球の街灯が実在する。新興住宅の新築ラッシュも相次ぎ、新旧のコントラストが裸電球に照らされる異様な宵闇路地空間が形成されている。

錆び電柱と裸電球2

こんないい具合に時を重ねた町には、それに見合うラーメン屋があるというものだ。そのなは菊や!

菊や外観

どう?この店舗外観…躊躇なくす〜っと入れます?
変り種ラーメンとして度々メディアにも登場している店で、入口に書かれた謎のメニュー郡の一例を挙げれば、アルカリは梅干入りラーメンで、コーヒーミルクは珈琲牛乳ラーメン。背後の狭い6席ほどのカウンターのみの店内。昔の商店によくみられたように、店の奥が踏み台2段ほど上がって住居になっており、カウンターから丸見え。

牛乳ラーメン

イチオシの牛乳ラーメン¥750。見た目には脂と牛乳スープが完全に分離しているように見えるが、食べてみるとこれが違和感なくすっきりとすらしている。豚骨スープのようなマイルドさがあり、牛乳臭さは全くない。牛乳を飲んでるという感覚はなく、マイルドさを増したラーメンのスープを飲んでいるという前向きな感覚しかない。いや本当。驚きなのはスープだけに非ず。チャーシューは厚めで肉肉しさを残しつつも、赤身中心で柔らかく煮込んである。臭みもない。麺は特別なものではないながら、全体のバランスが実にいい。総じてなかなか考えられている思えるから不思議だ。
奇をてらったように見えて、特別にこだわった食材とかじゃないフツーさの先にあるような味に、首を傾げつつも、非常に満足している自分がいる。やばい、ハマってるかも!? 過度な期待はせず、引き気味に勇気ある突入をオススメする。こういうの好きならば、嬉しい正体がうかがえることだろう。

菊や外観引き

菊や
11:00〜15:00/17:00〜20:00
定休;月曜
東京都足立区千住大川町10-3
※時間等変更の場合があります



刈部山本

刈部山本(かりべ・やまもと)とは・・・
ラーメンなどのB級グルメを主食とし赤線跡・軍事遺跡・レトロ建築等を巡る路地裏徘徊人。
東京の下町、谷根千の路地裏に潜む古本喫茶を自営。レトロ少女マンガ・サブカル・町歩き等の古本・ミニコミが揃う空間で最高品質の珈琲と自家製ケーキを持て成す。
ふるほん結構人ミルクホールHP http://kekkojin.heya.jp/




2008年1月23日更新
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