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店長神保和香子

 まぼろし書店神保町店/第8回は「青春の瞬間/早稲田」刊行記念!『懐かしの町・街角散歩/前編』をお送りします。
(著者の方々の敬称は略させていただきました/商品の価格は税込価格です)


 2004年の後半には、「青春の瞬間/早稲田」の刊行を祝うかのように、懐かしい昭和の風景をテーマにした新刊書籍が立続けに発売になりました。今回はそれらの強力新刊を中心にご紹介していきます。

「両さんと歩く下町」 アマゾンへようこそ!

「両さんと歩く下町 『こち亀』の扉絵で綴る東京情景」
秋本治著
集英社
4-08-720265-8
税込価格700円

 1400回近く連載が続いている「こち亀」。作者の秋元治は、亀有などの下町を取材しているうちに(自身が葛飾区亀有で生まれ育った事もあり)、本編の背景としてだけでなく、東京という街の面白さ・奥深さを更に表現したくなってきたといいます。そこでマンガ作品の表紙である「扉絵」で「東京の下町情景を描く」という試みが始まったのです。
 その扉絵シリーズの集大成が、この「両さんと歩く下町」であり、もうこれだけで立派な「秋元治の自選ペン画集」なのです。
 まず、秋元治の素晴らしい画力に改めて驚かされます。特に、下町愛を込めたテーマ選択・マンガ家さんならではのメリハリの効いた構図の取り方は、本当に素晴らしい。
 亀有・千住・浅草・隅田川界隈・上野、そして超神田寿司の神田と、秋元治風超個人的下町案内が歯切れの良い文章で語られており、 作品取材時のエピソードも豊富に盛り込まれているので、「メイキング・オブ・こち亀」としても楽しめます。昭和27年生まれの著者は、楽しそうに昭和の下町情景を描写しています。が、昔を懐かしむだけでなく、「新しいものを取り入れる一方で古いものを残していくというバランスの取り方」で、懐かしいものを未来に引き継いでいけるのではないか……と述べて、本文を締めくくっています。「わが街」の変貌をありのままに見つめながら、さらに自身もその未来に参加したいという熱い想いが文章にもイラストにも溢れていて、「やっぱり、あの両さんを生み出した人だけあるなぁ〜」と嬉しくなるのでした。

「都電 懐かしの街角」 アマゾンへようこそ!

「都電 懐かしの街角/昭和40年代とっておきの東京」
天野洋一・撮影
明元社
4-902622-03-3
税込価格1,680 円

 こよなく鉄道を愛した写真家天野洋一の事であるとか、彼が亡くなった後その遺志を継いで編集プロダクションのスタッフが膨大な作品群の困難な編集作業に取り組んだ事とか、「年度別都電廃止路線図」「都電6000系オリジナルペーパークラフト」付きで「リバーシブルカバー装(裏は700系の正面顔に似せたレイアウト)」である事とか、書評として押さえておきたい重要ポイントが盛り沢山なこの一冊。ですが、私が強調したいのは、何と言っても、天野洋一撮影の写真群の力強さ! 
 御輿を担ぐ威勢のいい声。夏祭りの人波で埋め尽くされた永代橋。御輿といっしょにゆっくり進む都電の姿。昭和46年。
 走る都電の窓から外を見る男の子たちの真剣な顔。「狭い席一つゆずれば笑顔が二つ」。昭和47年。
 錦糸掘車庫前電停にて。通勤ラッシュ前、朝の光の中で、道に水をまくおばあさん。昭和46年。
 しっかりとした足取りで歩むお母さんと、おそろいワンピースの女の子。浅草、老舗佃煮屋の前を6000系が走る。昭和47年。
 中央線レンガ造りの高架の向こう、万世橋を行く7000系。 昭和41年。
 信じられないほど空いている首都高4号線の脇を6000系がマイペースで進む。道路の下には弁慶掘。昭和41年。
  それぞれの季節、街並み、人々の姿を楽しみながら、都電との組み合わせを考える。自分が愛するものの姿を最上の形で残そうという写真家の強い意志を感じます。

「懐かしの街 散歩術」 アマゾンへようこそ!

「懐かしの街 散歩術」
町田忍著
ちくま文庫
4-480-42015-0
税込価格819円

 まぼろしチャンネルのいろんな番組にもしばしば登場する、庶民文化研究家・町田忍。日曜研究家・串間努がムーミンなら、町田忍はスナフキン(フーテンの寅さん風味)というイメージを勝手に抱いている私です。
 さて、町田忍「散歩術」を惜し気も無く伝授してくれる太っ腹な本が出ました。
 ごく平凡な町や身近な町でも『興味のアンテナの立て方次第で』多くの発見が出来るし、旅情が味わえる……そんな町田流散歩哲学が、無邪気に、そして熱く語られます。
 「入門編/タイプ別町歩き術」でも、下町の歩き方(例/向島)といった定番だけでなく、オフィス街の歩き方(例/丸の内・大手町)、特産品のある町の歩き方(例/宇都宮・大谷)など、著者ならではのテーマ選びが楽しい。
 さらに「応用編/テーマ散歩のすすめ」「上級編/マイテーマを見つけよう」は、散歩術・極意の本格的な指南編。デジカメ散歩をぼんやりと続けていた私に、高校の時初めて眼鏡をかけて鮮明に周囲が見えた時のような驚き・喜び・納得感をもたらしてくれました。
 狛犬・消火栓・ホーロー看板・交通安全人形など、 町歩きで押さえたい鑑賞物件例が数多く紹介される「町歩き10のヒント」の章や、おまけコラムの「町田流散歩時の服装とリュックの中身」「お宝のメンテナンス術」を読んでいると、まさに『戦場へ向かう遊軍兵士のような姿勢で消えゆく古町や古物と対峙する、怪人・町田忍の人物伝(泉麻人の解説より)』を読んでいるのだ、という熱い手応えを感じるのです。
 しばらく中断していたけど、またやりたくなったな…。そんな気持ちになる一冊です。   
 今度のお休みには、久し振りにデジカメを持って自転車散歩に行こうかな。

 参考文献として、さらに3册紹介します。
・「ぶらり散策懐かしの昭和 消えゆく昭和の建物をたずねて」/町田忍著/扶桑社/2001年4月
/4-594-03120-X/ 税込価格1,400円 
 『懐かしの街 散歩術』が「料理の基本編」だったとすると、こちらは美しい写真を数多く載せた「レシピ集」。
 デパートであれば、階段廻りのデザインやエレベータの表示板、各デパートのシンボルであるライオン像・天女像など。銭湯であればタイル絵、ペンキ絵、下足箱の札などの小物。 建築的な意匠など、「眼の保養物」をきっちり押さえるのが町田流散歩術の楽しい特徴のひとつ。自分もよく知っているはずの建物の、隠された実力を再発見する事になるでしょう。
・「東京遺産な建物たち」/ 東京新聞「東京遺産選定委員会」監修/新紀元社/4-7753-0312-0
/税込価格1,890円
 本を見てその気になったら、今すぐ訪問可能な「現役の建物たち」が選ばれているのが特徴。また、上手にその気にさせてくれる優秀なガイドブックでもあります。ロールキャベツが美味しい新宿「アカシア」、不思議なパワーが集合している下北沢「ザ・スズナリ」など、私のよく知っている場所が愛情込めて紹介されているのは嬉しいですね。
・「東京現代遺跡発掘の旅」(散歩の達人ブックス-大人の自由時間)/伊東悦代著/交通新聞社/
4-330-71702-6/税込金額1500円
 月刊誌「散歩の達人」での連載を加筆修正してまとめたもの。「散歩の達人」本誌のイメージ通り、内容は狭く深く濃い。「遺跡発掘の旅」なので、浅草の仁丹塔や東京スタジアムなど、失われてしまった建築物を調査・聞き込みで再現している章がほとんどですが、「上野大仏」のように不思議な形で生き残った遺跡をレポートした章もあります。この本を読んで、上野公園の顔面だけの大仏様の謎が、ようやく解けました。

 第8回『懐かしの町・街角散歩/前編』、いかがでしたか。
 後編では真打ちである「青春の瞬間/早稲田 50's-80's」も登場します。
 次回の「まぼろし書店・神保町店」もよろしくお願いいたします。


『だまされる快感』
『秘密基地大作戦』
『疾風の新着情報!!』
『疾風の新着情報!』
『入魂の一冊』
『名画座の時代』
『あのころの風景』


2005年1月27日更新
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